商品に価値を与えるストーリー (その2)

ミネラルウォーター市場は成熟し
各メーカーは限られた市場で
産地やミネラル含有率などで
差別化しようとしています。

ミネラルウォーターの「ボルヴィック」は
ストーリーを導入することでオンリーワン商品に
できました。
ミネラルウォーターのジャンルで
他社が真似したとしても
二番煎じになってしまう
実に優れた手法です。

ミネラルウォーターを買うとき
決まったブランドは?
と尋ねられても
「絶対にコレ」
という人はいますが
コーヒーやジュースと比べれば
こだわらない人が多い
のではないでしょうか。

それは、ミネラルウォーターを選ぶ基準は
ブランドより価格という割合が大きい
といわれます。

差別化が難しい市場で
フランスのミネラルウォーター
「ボルヴィック」はストーリーを導入され
売上げを大幅に伸ばされました。

20代の若者や子どもを持つ30代主婦の
心に突き刺さったといわれます。





ボルヴィックが導入したのは 
「1L for 10L」
ワンリッター・フォー・テンリッター
というストーリーです。

「1L for 10L」とは
ボルヴィックが1L売れるごとに
アフリカで10Lの清潔で安全な
水が生まれるという意味です。

売り上げの一部が
ユニセフ活動支援金となって
アフリカで飲料水を確保するため
井戸づくりが実施されました。

2005年にドイツでスタートし
2006年にはフランス
そして2007年から日本で
実施されました。

ユニセフとパートナーシップで
ドイツはエチオピア
フランスはニジェール
日本はマリを支援しました。

生活者の視点に立てば
ボルヴィックを買えば
アフリカを助ける社会貢献に
参加できることになります。

ボルヴィックのWebサイトには
「あなたがボルヴィックを
 飲むごとに
 アフリカで笑顔が
 また増えます」
と説明されました。

このようしてボルヴィックは
他社と明確な差別化することに
成功しました。
2007年7〜8月には前年対比で
134%の売上げを記録しました。


消費者のブログでも反響は大きく
「どうせ買うならボルヴィック」
という書き込みが増えました。

CSR活動の一環としてユニセフなどに
寄付する企業は多くありますが、
なぜ、ボルヴィックのストーリーは
多くの人に共感を呼んだのか?

テレビCM広報という要因はありますが
それだけではありません。
ストーリーの組み立て方法が
とても上手かったからといわれます。

「ミネラルウォーターを買う」
という消費者の行為と
「アフリカで井戸が掘られ
 清潔な水が供給される」
という支援事業の
どちらにも「水」という言葉が共通します。

『1Lごとに10Lが給水される』
という数字が分かりやすく
「1L for 10L」という
キャッチコピーになりました。


アフリカ諸国が抱える問題は
水だけではありませんが
生活必需品である「清潔な水」を
供給することは波及的効果があります。

ユニセフをパートナーとした
コラボレーションにより
支援金がどのように使われるか?
それが明確だったといえます。


商品を買う人が主人公になる
ことも特徴的でした。

ミネラルウォーターを買おうとコンビニで
棚を見ると多くのブランド商品があります。
消費者はボルヴィックの
「1L for 10L」のストーリーを思い浮かべます。

1本が500mLとすれば
1本を買えば5Lの水が
アフリカで供給される
と想像します。

「俺って良い人かも?」
と思いながらボルヴィックを
レジに持っていきます。

ボルヴィックを買って飲んで
満足感に浸りながら
ストーリーの主人公になります。


商売に利用してるだけで
偽善にすぎないという反論も
否定できませんが
消費者が良い気持ちになり
企業の売上げも上がり
実際にアフリカで助かる子どもたちが
多くいることは事実です。


公共的な社会貢献を重視したマーケティングを
「ソーシャルマーケティング」と呼ばれています。
この手法が成功するポイントは
@わかりやすい
A消費者が主人公
B満足感を味わうこと
この3つが大切と指摘されます。



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